小池東京都知事による関東大震災朝鮮人犠牲者追悼文取り止めに対する抗議声明

  小池百合子東京都知事は、2021年9月1日に「9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会」が主催する、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典に、都知事名での追悼文の送付を五年連続で取り止めた。 
 追悼式は、日朝協会東京都連合会や日本中国友好協会東京都連合会などによって組織された実行委員会が、都立横網町公園(東京都墨田区)において、1973年以降毎年開催しているものである。1923年の関東大震災では、「朝鮮人が井戸に毒を流した」などといった流言飛語が広がったことで、軍隊や警察、自警団などによって数千人ともいわれる朝鮮人、中国人が虐殺された。式典では、そうした人びとへの追悼がおこなわれている。
 1973年以来、式典には歴代の都知事が知事名で追悼文を寄せてきた。しかし、2017年3月、都議会で自民党都議が、主催団体の案内文に虐殺の犠牲者数が「6千余名」とあるのは根拠が希薄などとして問題視し、追悼文送付を見直す必要性を指摘した。これに対し、小池都知事は、「毎年慣例的に送付してきた。今後については私自身がよく目を通した上で適切に判断する」と答弁し、見直しを示唆した。都建設局はこの答弁などを受けて追悼文の送付中止を検討し、その方針を小池都知事も了承した。
 報道によれば、小池都知事は追悼文を送らない理由について、都慰霊協会が主催する大法要で、関東大震災の「犠牲者すべてに哀悼の意を表している」とし、「個々の行事への(追悼文の)送付は行わない」と報じられている。しかしながら、朝鮮人虐殺は、民間人の差別意識の問題と合わせて、日本の植民地支配とも密接に結びついて起きたものである。その意味で、虐殺による被害者と自然災害による犠牲者を同列に追悼することは、虐殺の歴史を隠蔽する行為にほかならない。
 また2019年末、実行委員会が提出した横網町公園の使用許可申請に対して、東京都は公園使用条件の遵守を求める不当な誓約書の提出を要求した。この要求は、様々な団体からの抗議を受け撤回されたが、問題なのは、この誓約書の提出要求の背景に、2017年からの朝鮮人虐殺の事実を否定する団体の活動(ヘイトスピーチ)があった点である。
 関東大震災時の朝鮮人虐殺事件に関しては、学術的な研究成果が今日まで膨大に積み重ねられてきた。その成果として、軍隊や警察が流言・デマの拡散に主体的に関与した国家的・組織的犯罪であったこと、さらにその上で数千人の朝鮮人・中国人の虐殺がおこなわれたことなどが具体的に明らかにされている。
 追悼文の送付は、東京で起きた民族差別による虐殺行為という歴史的な教訓を忘れない、二度と繰り返してはならないという、東京都民の積年の思いが込められていたのであり、小池都知事個人の問題ではない。そして、五年連続の追悼文不送付となり、この状況が常態化しつつある。追悼文の送付取り止めを既成事実化しようとする小池都知事の姿勢は、歴史に対する無理解を露呈するだけでなく、そうした東京都民の思いをも踏みにじるものでもある。当会は、小池東京都知事が関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文の送付を取り止めたことに対して、強い抗議の意を表明する。
2021年9月13日
東京歴史科学研究会