お知らせ

文化財保護法の改定に対し、より慎重な議論を求める声明

 

 私たちは文化財保護法の改定に対し、より慎重な議論を強く求めます。

 

 2017831日、文化庁のホームページ上に「文化審議会文化財分科会企画調査会中間まとめ」が公表され、現在、意見募集(パブリックコメント)が行われています。これは、519 日に文部科学大臣から、文化財の確実な継承に向け、未来に先んじて必要な施策を講じるための文化財保護制度の在り方について包括的な検討を求める諮問が文化審議会に対して行われ(「これからの文化財の保存と活用の在り方について」)、今年度中の文化財保護法の改定を視野に、文化審議会文化財分科会企画調査会が検討してきた答申の内容をとりまとめたものです。

 この「中間まとめ」の、背景(Ⅰ)と基本的な考え方(Ⅱ)において掲げられている現状認識と理念は、数次の大規模災害を日本社会が経験したあと、景観も含めた文化財等が一瞬にして失われかねないこと、さらに、大規模災害がなくとも、日々、不可逆的に文化財等失われていることを痛感しているわれわれと共通のもので、大いに共感するところです。

 また、個別の論点についても、単一もしくは複数の自治体により、未指定文化財も視野に入れた「地域における基本計画」の策定(Ⅲ1(2))や、「ノウハウを持った支援者」の積極的な位置づけ(Ⅲ2(1))、「文化財のデジタルアーカイブ」の必要性(Ⅳ(4))の提起等は、その方向性については共有できるものと考えます。

 特に、最後に「中長期的観点から検討すべき課題」として挙げられている、文化財行政に関わる人材や学芸員等の一層の育成、大規模災害発生時の文化財レスキュー等については、具体的方策の検討に早急に着手すべきで、課題が指摘されたこと自体がその出発点としてきわめて重要であると考えます。

 このように、「中間まとめ」には継続的に議論されるべき、積極的な論点が多く提出されています。

 

 しかし、他方で、今回の動きの発端となった文部科学大臣の諮問は、2016330日に「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」が示した、「明日の日本を支える観光ビジョン-世界が訪れたくなる日本へ」を受けたものです。このビジョンでは、「観光は、真に我が国の成長戦略と地方創生の大きな柱である」との認識の下、「『文化財』を、『保存優先』から観光客目線での『理解促進』、そして『活用』-『とっておいた文化財』を『とっておきの文化財』に-」が掲げられ、「2020年までに、文化財を核とする観光拠点を全国で200整備、わかりやすい多言語解説など1000事業を展開し、集中的に支援を強化」することがうたわれています。

 つまり、文化審議会文化財分科会企画調査会が検討しているのは、文化財を観光資源として活用し、前記の数値目標を達成するための制度的枠組みを整備するための法改定です。今回の「中間まとめ」のこの方向は、儲かる文化財とそうでない文化財という価値序列を創出しかねず、地域の文化・教育にとって特に重要な文化財であっても、短期的かつ金銭的な利益を生まなければ顧みられなくなる恐れがあります。

 これは、国民の文化的向上と世界文化の進歩に貢献することを目的として文化財を保護するために策定された文化財保護法や、本年6月に改定された文化芸術振興基本法の理念と乖離するものであるといわざるを得ません。

 

 今、日本は都市への人口集中と地方の衰退が著しく、地域に残されてきた文化財は深刻な危機に直面しています。地域が抱える事情は様々で、そのような危機を真に解決するには、どのような施策が必要とされているのか、個々の地域の状況に即してあらゆる可能性を検討することが必要です。その意味では、上記で方向性を共有できるとした「地域における基本計画」の策定(Ⅲ1(2))や、「ノウハウを持った支援者」の積極的な位置づけ(Ⅲ2(1))などについても、人材や資金の余裕が全くない地方の小規模自治体において、その実施が危惧されるところです。基本計画から漏れる文化財に対する目配りや、計画を実際に支える学芸員等の立場と活躍の場の保障、さらに地域格差が広がらないような施策などが検討されなければ、文化財の保存と活用を巡る状況が、今以上に困難な事態に立ち至るのではないでしょうか。

 また、文化財の保存と活用について、従来から重要な役割を果たしてきた各種博物館に関しても、UNESCOの「ミュージアムとコレクションの保存活用、その多様性と社会における役割に関する勧告」(20151120日)での「加盟各国は、ミュージアムの主要機能は、社会にとって何よりも重要なものであり、単なる財政的価値に換算しえないことを認識すべきである」という指摘がより深く認識されるべきものと考えます。

 

 先人が残してきた文化財を公共財ととらえ、今に生きる私たちが享受し、未来に継承していくため、また、地域の住民がその地域の文化財を自ら学ぶことの楽しさを知るために、何をなすべきなのか。その答えは、我が国の現状に目を向け、直面する課題を丹念に洗い出す作業なしに見いだせません。これが検討の出発点であり、文化審議会文化財分科会企画調査会がまず果たすべき役割だと考えます。大臣諮問から「中間まとめ」が提出されるまでの期間はわずか3ヶ月であり、十分な議論を尽くされたとは言えず、拙速に過ぎます。

 

 「中間まとめ」で示された積極的な論点が十全に生かされるためにも、結論ありきの議論ではなく、国民の文化的向上と世界文化の進歩に貢献することを目的とした文化財保護のため、長期的視野に立った十分な議論を尽くすことを求めます。

 また、全国民に、今回のパブリックコメントを含め、あらゆる機会に、あらゆる場所で、議論を行い、今回の文化財保護法改定について意見表明を行うよう求めます。これは国と研究者のみに関わるものではなく、わが国の将来に重要かつ長期的な影響を与える課題です。次世代に何を残すか、が今問われています。

 

 2017年10月6日

 

日 本 歴 史 学 協 会

地 方 史 研 究 協 議 会

歴 史 教 育 者 協 議 会

立 正 大 学 史 学 会

内 陸 ア ジ ア 史 学 会

信 濃 史 学 会

東 北 史 学 会

ジ ェ ン ダ ー 史 学 会

京 都 民 科 歴 史 部 会

広 島 西 洋 史 学 研 究 会

東 京 歴 史 科 学 研 究 会

広 島 史 学 研 究 会

日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会

中 国 四 国 歴 史 学 地 理 学 協 会

東 海 大 学 史 学 会

歴 史 学 研 究 会

秋 田 近 代 史 研 究 会

日 本 史 研 究 会

交 通 史 学 会

文 化 財 保 存 全 国 協 議 会

総 合 女 性 史 学 会

大 阪 歴 史 学 会

関 東 近 世 史 研 究 会

日 本 風 俗 史 学 会

千 葉 歴 史 学 会

歴 史 科 学 協 議 会

専 修 大 学 歴 史 学 会


声明PDFファイル.pdf

小池東京都知事による関東大震災朝鮮人犠牲者追悼文送付取り止めに対する抗議声明

 

小池百合子東京都知事が、201791日に「9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼実行委員会」が主催する、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式に、都知事名での追悼文の送付を取り止めた。

追悼式は、日朝協会東京都連合会や日中友好協会などによって組織された実行委員会が、都立横網町公園(東京都墨田区)において、1973年以降毎年開催しているものである。1923年の関東大震災では、「朝鮮人が井戸に毒を流した」などといった流言飛語が広がったことで、軍隊や警察、自警団などによって数千人ともいわれる朝鮮人、中国人が虐殺された。式典では、そうした人びとへの追悼がおこなわれている。

1973年以来、式典には歴代の都知事が知事名で追悼文を寄せてきた。しかし、20173月、都議会で自民党都議が、主催団体の案内文に虐殺の犠牲者数が「6千余名」とあるのは根拠が希薄などとして問題視し、追悼文送付を見直す必要性を指摘した。これに対し、小池都知事は、「毎年慣例的に送付してきた。今後については私自身がよく目を通した上で適切に判断する」と答弁し、見直しを示唆した。都建設局はこの答弁などを受けて追悼文の送付中止を検討し、その方針を小池都知事も了承したとのことである。

さらに、825日におこなわれた定例会見で、記者から追悼文の送付を取り止めることにした理由について聞かれた小池都知事は、「これまでにも都知事として、関東大震災で犠牲となられた全ての方々への追悼の意を表してきた」と答えた。しかしながら、朝鮮人虐殺は、民間人の差別意識の問題と合わせて、日本の植民地支配とも密接に結びついて起きたものである。その意味で、虐殺による被害者と自然災害による犠牲者を同列に追悼することは、虐殺の歴史を隠蔽する行為にほかならない。

歴史研究では、関東大震災時の朝鮮人虐殺事件に関して実証的な成果が今日まで膨大に積み重ねられてきた。その成果として、軍隊や警察が流言・デマの拡散に主体的に関与した国家的・組織的犯罪であったこと、さらにその上で数千人の朝鮮人・中国人の虐殺がおこなわれたことなどが具体的に明らかにされている。そのため、この事件に関して国家に加害責任があることは明白である。

また、小池都知事は、追悼文の送付をいま取り止めることの積極的な理由について何一つ説明していない。追悼文の送付は、東京で起きた民族差別による虐殺行為という歴史的な教訓を忘れない、二度と繰り返してはならないという、東京都民の積年の思いが込められていたのであり、小池都知事個人の問題ではないのである。追悼文の送付取り止めは、小池都知事の歴史認識の甘さを露呈するだけでなく、そうした東京都民の思いをも踏みにじるものでもある。

さらに、小池都知事の動きを受けて、828日には、墨田区長が追悼文の送付取り止めを実行委員会に申し出ており、影響は広がっている。自治体の首長らによるこうした動向は、関東大震災時の朝鮮人虐殺の歴史を否定する言説の広がりをも助長することになりかねない。

過去に犯した加害の歴史から目を背ける行為によって、国際都市東京のあり方が世界から厳しく問われることになるだろう。当会は、小池東京都知事が関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文の送付を取り止めたことに対して、強い抗議の意を表明する。

201797

東京歴史科学研究会

抗議声明PDFファイル.pdf

吉見裁判最高裁決定に対する抗議声明


2017629日、最高裁判所第一小法廷は、吉見義明さんが桜内文城前衆議院議員を名誉毀損で訴えた裁判(以下、吉見裁判)において、吉見さんの上告を棄却し、受理しないという極めて不当な決定(以下、最高裁決定)を行った。

吉見裁判は、桜内前議員が日本軍「慰安婦」研究の第一人者である吉見さんの著書を「捏造」であると発言したことに対して、吉見さんが名誉を毀損されたとして訴えた裁判である。しかし、2016120日の東京地方裁判所判決(以下、地裁判決)、同年1215日の東京高等裁判所判決に続いて、今回の最高裁決定は吉見さんの訴えを不当に斥けた。これら一連の判断は、誰が見ても容易に理解できる日本語の解釈を歪曲させたものであり、非論理的なものである。

歴史研究者にとって、研究成果を根拠無く「捏造」といわれることは、最大級の侮辱であり、研究者生命を奪われかねないほどに深刻なことである。歴史学の学術団体である当会として、このような桜内氏の問題発言が放置されることを、強く憂慮せざるをえない。

また、当会は、学術研究の立場から、これまで日本軍「慰安婦」制度の歴史について真摯に検討してきた。日本軍「慰安婦」制度は、日本の国家・軍隊が引き起こした重大な犯罪であり、その本質は性奴隷制度であったことは、厳然たる事実である。こうした日本軍「慰安婦」の実態の解明において、最も大きな役割を果たしてきたのは吉見さんであり、その研究成果は国内外の歴史学界において広く共有されている。このことを証左する一つとして、地裁判決に対し2016530日付で出された、当会を含む15の歴史学会・歴史教育者団体による抗議声明を指摘しておきたい。

なお、今回の最高裁決定が、吉見さんの研究成果を「捏造」だと認定したわけではない。また、日本軍「慰安婦」制度が性奴隷制度であるとの根拠が揺らいだわけでもない。

 しかしながら、今回の最高裁決定は、歴史研究者の研究成果に対して根拠なく「捏造」と発言しても免責される状況を容認したものであり、その意味で歴史学のこれまでの研究成果を踏みにじったといえる。東京歴史科学研究会は、こうした今回の最高裁決定に対して強く抗議する。

201776

東京歴史科学研究会

抗議声明PDFファイル

参考:裁判支援団体「YOいっション」Webサイト(裁判関係資料・各種声明等を掲載)

当会を含む歴史学関係学会の共催による若手研究者問題についてのシンポジウムが開催されます。
歴史学を志す若手研究者をめぐる近年の状況について討論する場です。
若手研究者や大学教員に限らず、歴史学に携わる様々な立場からのご参加をお待ちしております。
開催要領は以下の通りです。


「若手研究者問題」シンポジウム2017  チラシPDF

  歴史学の担い手をいかに育て支えるか

 ――日本歴史学協会「若手研究者問題」アンケート調査中間報告から――


【日時】201734(土)13

【会場】駒澤大学駒沢キャンパス1号館204教場

正門から直進、本部棟を通り抜けると1号館2階に着きます。


【シンポジウムプログラム】


開会の辞 小沢弘明(若手研究者問題検討委員会委員長・日本学術会議連携会員)

趣旨説明 瀬畑 源(若手研究者問題検討委員会委員)

1)報告

1 日本歴史学協会ウェブ・アンケート中間報告

 ...日歴協若手研究者問題検討委員会より     浅田進史(駒澤大学)

2 学部・大学院教育の現在――国立大学の事例から 山田 賢(千葉大学)

3 若手研究者問題は若手研究者問題か?

  ――「大学改革」の30年と失われた未来、そして奪還への遠い道のり

橋本伸也(関西学院大学)

2)コメント

1 日本学術会議から   高埜利彦(学習院大学・日本学術会議会員)

2 西洋史若手研究者問題検討WGから  松本 涼(福井県立大学)

3)討論

閉会の辞   木村茂光(日本歴史学協会会長・日本学術会議連携会員)

 

主催:日本歴史学協会・歴史学研究会・東京歴史科学研究会・歴史教育者協議会・歴史科学協議会・九州西洋史学会・日本史研究会・西洋史研究会・同時代史学会・東北史学会・東北大学国史談話会 

協力:総合女性史学会・内陸アジア史学会・広島史学研究会・信濃史学会・ジェンダー史学会・西洋近現代史研究会・現代史研究会・地方史研究協議会


【開催趣旨文】

 歴史学は、人間とその社会が積み重ねてきた過去の痕跡を、発掘・保存・記録・検証・考察し、過去との対話を通じて現在の社会のあり方を問うものであろう。日本の大学・大学院は、学科・専攻・科目・演習・講義などの制度的枠組みのなかで、歴史学が積み上げてきた学問的蓄積と方法論を学ぶ場を提供し、歴史的判断力をもつ社会人を送り出してきた。そのなかには、研究・教育関係者、文書館・図書館・博物館・美術館などの専門職、出版関係者、学会事務スタッフといった歴史学界を支える担い手が含まれている。しかし、そのような歴史学の担い手を育て支える環境は、現在、どのような課題を抱えているのだろうか。

 1990年代初頭に始まった大学院の拡充政策から四半世紀を経て、文部科学省が区分する「史学」の大学院生数は大きく減少した。修士課程の場合、1992年度の1121人から2015年度の762人へと、博士課程の場合、1992年度の721人から2015年度の444人へと、修士課程では3割強、博士課程で4割弱も減少した。同じ期間に、「文学」は修士課程・博士課程ともに3割弱の減少、「哲学」は修士課程で7割の増加と博士課程で2割弱の減少をみているが、「史学」の減少幅が人文科学系のなかでもっとも大きい。その一方で、人文科学系全体の大学院生の数は、同じ期間に修士・博士課程ともに6割以上も増加した。これは、「史学」・「文学」・「哲学」以外の「その他」として区分される院生が大幅に増加したためである。

したがって、この文部科学省が区分する「史学」の院生の減少は、単に歴史学を志望する学生数が減少したというよりも、国立大学法人化をはじめとした、この十数年に及ぶ日本の大学全体に対する制度改編を背景としたものであろう。同時に、文部科学省が区分する「史学」の院生の減少と「その他」の増大は、歴史学の担い手を育成し、またその担い手を支えるための制度的な基盤が大きく変容しつつあることを反映しているのではないだろうか。

2000年代に入って、非正規雇用の増大を背景とした格差問題に社会的関心が集まるとともに、「若手研究者問題」も学問の世界を越えて社会的な認知を得るようになった。他の学問分野ではこの問題について調査・分析と提言が公表されており、歴史学のなかでも西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループによるアンケート調査を通じた分析と提言が現れている。1990年代以降の大学院拡充政策の結果として、人文社会科学全般で大学院生が大幅に増加してきたにもかかわらず、現在、歴史学の学会・研究会全般で、会員数の減少による活動継続への不安が語られている。歴史学の担い手を育て支える制度はどのように変化し、またどのような課題を抱えているのだろうか。そして、歴史学を専攻する「若手研究者」はどのような問題に直面しているのだろうか。

歴史関連諸学会間の相互連絡・交流の促進を目的とした日本歴史学協会は、若手研究者問題検討委員会を設置し、20159月から20163月まで「『若手研究者問題』解決に向けた歴史学関係者の研究・生活・ジェンダーに関するウェブ・アンケート調査」を実施した。20172月下旬までに同調査の中間報告書がウェブ上に公開される予定である。本シンポジウムは、この中間報告書を題材に、歴史学における「若手研究者問題」、すなわち歴史学の担い手をいかに育て支えるかについて、討論する場を提供するものである。

 本シンポジウムでは、まず日本歴史学協会若手研究者問題検討委員会より同委員会が実施したウェブ・アンケートの中間報告書から浮かび上がる問題を、とくに大学院生・ポスドク・非常勤講師などを中心に、「若手研究者問題」に直面する当事者に焦点を合わせて整理する。そのうえで、歴史学の大学院教育が抱える現状・問題について、国立大学の事例として千葉大学の山田賢氏より報告いただく。また、教育史・教育社会史の立場から大学問題について発言されてきた関西学院大学の橋本伸也氏より、この「若手研究者」問題について発言いただく。これらの報告を踏まえて、日本学術会議から高埜利彦氏より、西洋史若手研究者問題検討ワーキンググループから松本涼氏よりコメントいただき、最後にフロアを交えた全体討論を行う予定である。

次世代の歴史研究者の育成に携わっている大学教員をはじめ、現に「若手研究者問題」の渦中にある非常勤講師や大学院生、その他歴史学に携わる様々な立場の方々の積極的な参加と討論をお願いしたい。

東京歴史科学研究会近代史部会におきまして下記の要領で研究報告会を開催いたします。
皆様のご参加をお待ちしております。

【日時】2017218日(土)14時~17時(予定)
【場所】明治大学駿河台キャンパス グローバルフロント 411B共同演習室
【報告】
第1報告:原田雄斗氏(一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程
 題目「天皇の代替わりの地域的展開と神社界
      ―大正天皇即位礼における埼玉県を事例に―(仮)

第2報告:新井隆氏(一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程、日本学術振興会特別研究員)
 題目「マリアナ諸島に戦争の痕跡を刻むということ
      ―グアム・サイパンの景観変容に見る記憶の「もつれ」

【アクセス】
JR中央線・総武線、東京メトロ丸ノ内線/御茶ノ水駅 下車徒歩3
・東京メトロ千代田線/新御茶ノ水駅 下車徒歩5
・都営地下鉄三田線・新宿線、東京メトロ半蔵門線/神保町駅 下車徒歩5
 *明治大学までのアクセスマップ
 *明治大学キャンパスマップ

【資料代】当日、実費をいただきます。

鎌倉市円覚寺結界遺構の保存を求める声明

 私たちは鎌倉市が計画している円覚寺西側結界遺構の削平工事に強く反対します。

 JR横須賀線北鎌倉駅下り線ホームに北から伸びた岩塊は、鎌倉を代表する寺院の一つ円覚寺の寺域範囲を示す西側結界遺構であります。円覚寺境内は国指定史跡であり、現在、結界遺構は、指定範囲外とはなっていますが、寺域の重要な構成要素であることは疑う余地がありません。

 この結界遺構は、国重要文化財「円覚寺境内絵図」(建武年間)にも明確に描かれている重要遺構です。さらに遡れば、この遺構は、円覚寺創建以前に鎌倉幕府第三代執権北条泰時がおこなった境界祭祀の隣接地であることから、中世鎌倉そのものの西側境界であった可能性すらあります。まさしくこれは、中世鎌倉の景観を今に伝えるきわめて重要な歴史遺産であります。

 冒頭述べたようにこの結界遺構に対して、削平計画が進められています。鎌倉市は遺構を削平する根拠として、明治期の鉄道建設で遺構は損傷しており価値が損なわれているという見解をあげています。これは結界遺構が往時の様相を良好な形で保っているという厳然たる事実に眼をそむけるもので、理解に苦しみます。また、最近になって中世史研究者による地形図の詳細な検討の結果、損傷を受けていないことが新たに提起されてもいます。こうした懸念がある以上、国指定史跡の重要な構成要素である結界遺構の破壊につながる行為は、慎重に検討されるべきと思量します。

 荒々しい岩盤の造形で表現された谷戸の中に神社仏閣がおさまり、山裾に中世墳墓窟のやぐらが開口するという風景こそ、中世以来の鎌倉の特色と言っていいでしょう。円覚寺結界遺構はそのような中世鎌倉の景観をよく伝えるものであり、これを保全し、町づくりの中に活かしていくことが、今、私たちに強く求められていると考えます。

 鎌倉市は、この計画の無謀さを認識し、賢明な判断を下すことを求めます。

以上

 

 二〇一六年九月一日

 

日本歴史学協会

戦国史研究会

東京歴史科学研究会

地方史研究協議会

日本史研究会

日本風俗史学会

日本考古学協会埋蔵文化財保護対策委員会

文化財保存全国協議会

歴史科学協議会

歴史学研究会

歴史教育者協議会

東京歴史科学研究会近代史部会におきまして下記の要領で書評会を開催いたします。
皆様のご参加をお待ちしております。

【日時】 2016922日(14時~

【書評】 藤野裕子『都市と暴動の民衆史
         ―東京・1905-1923年―』(有志舎、2015年)

【評者】 能川泰治氏 (金沢大学)

【リプライ】 藤野裕子氏 (東京女子大学)

【会場】 明治大学駿河台キャンパス アカデミーコモン階 309F教室

【アクセス】
JR中央線・総武線、東京メトロ丸ノ内線/御茶ノ水駅 下車 徒歩3 
・東京メトロ千代田線/新御茶ノ水駅 下車 徒歩5
・都営地下鉄三田線・新宿線、東京メトロ半蔵門線/神保町駅 下車 徒歩5
 *明治大学までのアクセス
 *明治大学キャンパスマップ

【参加費】 300

※事前のお申込み等は不要です。直接会場へお越しください。

◆「東歴研ニュース」メールマガジン版刊行のお知らせ◆

このたび、東京歴史科学研究会では情報化の進展に鑑み、会員の皆様にお送りしている「東歴研ニュース」につき、メールマガジン版を新たに刊行することにいたしました。これまで「東歴研ニュース」は葉書にて行事開催予定をお送りしてまいりましたが、今後は従来通りの葉書版と新設のメールマガジン版のどちらか一方をお選びいただけるようになります。

メールマガジン版ニュースでは、葉書版と同様の行事開催情報のほか、発行頻度の向上、Web情報へのリンクなど媒体特性を生かして情報をお届けしていく予定です。

 サンプル:「東歴研ニュース」2016年度No.1メールマガジン版 

 ◎メールマガジン版への移行をご希望される方は:

・お手続きはE-mailでのみ受け付けます。お電話・ファクスでのお申込みは受け付けませんのでご了承ください。

・お申込みはメールマガジンの受信アドレスとして希望するアドレスから当会のメールアドレス( torekiken@gmail.com )までメールにてご連絡ください。その際、お申込みメールの件名を「【メールマガジン移行希望】」とし、本文にご氏名の明記をお願いいたします。

・メールマガジン版にお申込みいただいた場合、それ以後発行された葉書版ニュースはお届けいたしません。もし葉書版に戻したい場合には別途ご連絡をお願いいたします。

・ご不明な点等ありましたら上記メールアドレスまでお問合せください。


注:「東歴研ニュース」メールマガジンは会員の方のみを対象としております。

  メールマガジンのみのご利用は受け付けておりません。

 わたしたち日本の歴史学会・歴史教育者団体は、日本軍「慰安婦」問題(以下、「慰安婦」問題)をめぐって、2015年5月に「「慰安婦」問題に関する日本の歴史学会・歴史教育者団体の声明」を発表した。だがその後、12月28日の日韓外相会談後におこなわれた共同記者発表(以下、日韓合意)と、2016年1月20日に言い渡された、吉見義明氏の名誉毀損をめぐる裁判(以下、吉見裁判)における原告敗訴の判決という、ふたつの大きな動きがあった。それらに対して、わたしたちは、以下の問題を指摘する。
今回の日韓合意は、第一に、「慰安婦」制度の責任を曖昧にしている。歴史研究は、日本政府・日本軍が軍の施設として「慰安所」を立案・設置・管理・統制したこと、「慰安婦」制度の本質は性奴隷制度であったこと、当時の国内法・国際法に違反していたことを明らかにしてきた。合意はそれらを踏まえておらず、「慰安婦」制度の責任については「軍の関与」という曖昧な認定にとどまっている。第二に、元「慰安婦」の方々の名誉や尊厳という人権に深く関わる問題について、当事者を置き去りにしたまま、決着をはかろうとしている。今回の合意で「慰安婦」問題が「最終的かつ不可逆的に解決されることを確認」し、国際社会において「互いに非難・批判することを控え」るとの表現によって、今後、歴史研究の進展にともなう新たな評価と問題解決の可能性が失われるのは不適切である。加えて、合意は歴史教育に言及しておらず、実際に教科書から「慰安婦」問題に関する叙述が削られる事態が進行している。教育によって歴史的事実を伝えていくことを、あらためて求める。日韓合意には、総じて当事者の思いや意思を顧みようとする姿勢がみられない。こうした、政府間で一方的に「解決」を宣言し、以降の議論を封殺するかのごとき手法では、「慰安婦」問題の抜本的な解決はありえない。
 一方、吉見裁判の判決文において、東京地方裁判所は、2013年5月に桜内文城衆議院議員(当時)が吉見義明氏の著書をめぐって「捏造」と発言したことを、「名誉毀損に該当する」と認定しながら、「意見ないし論評の域を逸脱したもの」とはいえないとして免責し、原告の請求を棄却した。「捏造」とは、おもな辞書によれば、「事実でないことを事実のようにこしらえ」る意であり、判決は、実証という手続きをかさね、学界で広く受け入れられてきた研究成果を、「捏造」と公言することの重大さを理解していない。研究者にとって、自らの研究成果が「捏造」と評されることは、研究者生命に直接関わる問題である。そうした事情を斟酌することのない発言と、それを容認するかのごとき不当な判決を、見過ごすことはできない。
 ふたつの動きは、問題の重要性を軽んじ、当事者を置き去りにしたまま、きわめて強引に「慰安婦」問題の幕引きをはかろうとする点で共通している。日韓両政府の関係者および日本の司法関係者が、「慰安婦」問題と真摯に向きあい、その真に根本的な解決にむけて取り組むことを求める。

2016年5月30日

歴史学関係15団体
 日本歴史学協会
 大阪歴史科学協議会
 大阪歴史学会
 ジェンダー史学会
 専修大学歴史学会
 総合女性史学会
 千葉歴史学会
 東京歴史科学研究会
 名古屋歴史科学研究会
 日本史研究会
 日本史攷究会
 日本思想史研究会(京都)
 歴史科学協議会
 歴史学研究会
 歴史教育者協議会

In May 2015, a national network of Japanese historians and history educators published a joint statement regarding the Japanese Army's "comfort women" issue.   Since the statement's publication there have been two major developments.  First, the Japanese and South Korean governments published a joint declaration about the "comfort women" issue following a December 28, 2015 conference between the two nations' foreign ministers   (hereafter, "the Japan-Korea Agreement").  Second, on January 20, 2016, the Tokyo District Court dismissed Professor Yoshiaki Yoshimi's defamation suit against former Diet representative Fumiki Sakurauchi.  These two developments have raised a number of serious issues, which we wish to highlight.   
First, we believe that the Japan-Korea Agreement obscures the issue of official involvement in the "comfort women" system. Historical research has unequivocally established that the Japanese government and army proposed, established, managed, and regulated "comfort stations" at military facilities, and that the "comfort women" system was essentially a system of sexual slavery that violated existing domestic and international legal standards.  Despite these facts, the Agreement fails to take heed of either point, going only so far as to vaguely acknowledge the "involvement of the Japanese military authorities."  
Second, the Japan-Korea Agreement fails to sufficiently consider the honor and dignity of former "comfort women," which, we believe, is a human rights issue.  Instead, the Agreement attempts to formally settle the issue without addressing the suffering of the victims.  Specifically, the Agreement states that the "comfort women" issue is "resolved finally and irreversibly."  In addition, it mentions that both parties "will refrain from accusing or criticizing each other" in the international community.  By declaring the issue formally resolved, these statements threaten to suppress subsequent historical research and any future solutions to the issue that research can provide.  Moreover, the Agreement makes no reference to historical education, despite the fact that accounts of the "comfort women" issue continue to be removed from Japanese textbooks.  In light of these trends, we renew our call that historical facts be properly related via education. 
In short we believe that the Japan-Korea Agreement fails to sufficiently address the hopes and desires of the parties involved.  Rather than representing a popularly-supported resolution that properly acknowledged the concerns of former "comfort women," it represents an intra-governmental accord that appears designed to suppress future debate.  Accordingly, we believe that the Agreement is incapable of truly and fundamentally resolving the "comfort women" issue. 
The second major development requiring mention concerns Professor Yoshiaki Yoshimi's defamation suit against former Diet representative Fumiki Sakurauchi.  Although the Tokyo District Court ruled that Sakurauchi's May 2013 comment that Professor Yoshiaki Yoshimi's research was "a fabrication" did in fact constitute defamation, it asserted that the comment does not "transcend the accepted limits of opinion or commentary" and ultimately denied Yoshimi's claim.  Major dictionaries define "fabrication" as the act of making something false appear true. This ruling fails to recognize the gravity and potential danger of a claim that an empirically supported and widely-accepted body of research is "a fabrication."  For researchers, a claim that one's findings are a fabrication is something that threatens one's career and future.  Therefore, we are unable to ignore statements that fail to recognize just how serious claims of academic dishonesty truly are and judicial rulings that appear to tolerate such claims.  
These two recent developments are similar in that they trivialize the significance of the "comfort women" issue, ignore the hopes and desires of the parties involved, and are designed to force an abrupt conclusion to the issue.  Therefore, we request that the concerned parties in the Japanese and Korean governments, as well as members of the Japanese judiciary, have a sober and honest debate about the "comfort women" issue and work to truly resolve it.

May 30, 2016

15 associations of history scholars and educators in Japan

The Japanese Historical Council
Association of Historical Science
Association of History of Japanese Thought
Chiba Historical Society
The Gender History Association of Japan
The Historical Association of Senshu University
The Historical Science Society of Japan
History Educationalist Conference of Japan
The Japanese Historical Society
The Japanese Society for Historical Studies
The Osaka Association of Historical Sciences
Osaka Historical Association
The Society for Historical Science of Nagoya
The Society for Research on Women's History
Tokyo Historical Science Association