吉見裁判最高裁決定に対する抗議声明

吉見裁判最高裁決定に対する抗議声明


2017629日、最高裁判所第一小法廷は、吉見義明さんが桜内文城前衆議院議員を名誉毀損で訴えた裁判(以下、吉見裁判)において、吉見さんの上告を棄却し、受理しないという極めて不当な決定(以下、最高裁決定)を行った。

吉見裁判は、桜内前議員が日本軍「慰安婦」研究の第一人者である吉見さんの著書を「捏造」であると発言したことに対して、吉見さんが名誉を毀損されたとして訴えた裁判である。しかし、2016120日の東京地方裁判所判決(以下、地裁判決)、同年1215日の東京高等裁判所判決に続いて、今回の最高裁決定は吉見さんの訴えを不当に斥けた。これら一連の判断は、誰が見ても容易に理解できる日本語の解釈を歪曲させたものであり、非論理的なものである。

歴史研究者にとって、研究成果を根拠無く「捏造」といわれることは、最大級の侮辱であり、研究者生命を奪われかねないほどに深刻なことである。歴史学の学術団体である当会として、このような桜内氏の問題発言が放置されることを、強く憂慮せざるをえない。

また、当会は、学術研究の立場から、これまで日本軍「慰安婦」制度の歴史について真摯に検討してきた。日本軍「慰安婦」制度は、日本の国家・軍隊が引き起こした重大な犯罪であり、その本質は性奴隷制度であったことは、厳然たる事実である。こうした日本軍「慰安婦」の実態の解明において、最も大きな役割を果たしてきたのは吉見さんであり、その研究成果は国内外の歴史学界において広く共有されている。このことを証左する一つとして、地裁判決に対し2016530日付で出された、当会を含む15の歴史学会・歴史教育者団体による抗議声明を指摘しておきたい。

なお、今回の最高裁決定が、吉見さんの研究成果を「捏造」だと認定したわけではない。また、日本軍「慰安婦」制度が性奴隷制度であるとの根拠が揺らいだわけでもない。

 しかしながら、今回の最高裁決定は、歴史研究者の研究成果に対して根拠なく「捏造」と発言しても免責される状況を容認したものであり、その意味で歴史学のこれまでの研究成果を踏みにじったといえる。東京歴史科学研究会は、こうした今回の最高裁決定に対して強く抗議する。

201776

東京歴史科学研究会

抗議声明PDFファイル

参考:裁判支援団体「YOいっション」Webサイト(裁判関係資料・各種声明等を掲載)