小池東京都知事による関東大震災朝鮮人犠牲者追悼文送付取り止めに対する抗議声明

小池東京都知事による関東大震災朝鮮人犠牲者追悼文送付取り止めに対する抗議声明

 

小池百合子東京都知事が、201791日に「9.1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼実行委員会」が主催する、関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式に、都知事名での追悼文の送付を取り止めた。

追悼式は、日朝協会東京都連合会や日中友好協会などによって組織された実行委員会が、都立横網町公園(東京都墨田区)において、1973年以降毎年開催しているものである。1923年の関東大震災では、「朝鮮人が井戸に毒を流した」などといった流言飛語が広がったことで、軍隊や警察、自警団などによって数千人ともいわれる朝鮮人、中国人が虐殺された。式典では、そうした人びとへの追悼がおこなわれている。

1973年以来、式典には歴代の都知事が知事名で追悼文を寄せてきた。しかし、20173月、都議会で自民党都議が、主催団体の案内文に虐殺の犠牲者数が「6千余名」とあるのは根拠が希薄などとして問題視し、追悼文送付を見直す必要性を指摘した。これに対し、小池都知事は、「毎年慣例的に送付してきた。今後については私自身がよく目を通した上で適切に判断する」と答弁し、見直しを示唆した。都建設局はこの答弁などを受けて追悼文の送付中止を検討し、その方針を小池都知事も了承したとのことである。

さらに、825日におこなわれた定例会見で、記者から追悼文の送付を取り止めることにした理由について聞かれた小池都知事は、「これまでにも都知事として、関東大震災で犠牲となられた全ての方々への追悼の意を表してきた」と答えた。しかしながら、朝鮮人虐殺は、民間人の差別意識の問題と合わせて、日本の植民地支配とも密接に結びついて起きたものである。その意味で、虐殺による被害者と自然災害による犠牲者を同列に追悼することは、虐殺の歴史を隠蔽する行為にほかならない。

歴史研究では、関東大震災時の朝鮮人虐殺事件に関して実証的な成果が今日まで膨大に積み重ねられてきた。その成果として、軍隊や警察が流言・デマの拡散に主体的に関与した国家的・組織的犯罪であったこと、さらにその上で数千人の朝鮮人・中国人の虐殺がおこなわれたことなどが具体的に明らかにされている。そのため、この事件に関して国家に加害責任があることは明白である。

また、小池都知事は、追悼文の送付をいま取り止めることの積極的な理由について何一つ説明していない。追悼文の送付は、東京で起きた民族差別による虐殺行為という歴史的な教訓を忘れない、二度と繰り返してはならないという、東京都民の積年の思いが込められていたのであり、小池都知事個人の問題ではないのである。追悼文の送付取り止めは、小池都知事の歴史認識の甘さを露呈するだけでなく、そうした東京都民の思いをも踏みにじるものでもある。

さらに、小池都知事の動きを受けて、828日には、墨田区長が追悼文の送付取り止めを実行委員会に申し出ており、影響は広がっている。自治体の首長らによるこうした動向は、関東大震災時の朝鮮人虐殺の歴史を否定する言説の広がりをも助長することになりかねない。

過去に犯した加害の歴史から目を背ける行為によって、国際都市東京のあり方が世界から厳しく問われることになるだろう。当会は、小池東京都知事が関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式への追悼文の送付を取り止めたことに対して、強い抗議の意を表明する。

201797

東京歴史科学研究会

抗議声明PDFファイル.pdf